恩田陸「蜜蜂と遠雷」

直木賞とりたての本を買って読む、という自分としてはめずらしくミーハーなことをした。題材がピアノの国際コンクールなんだけど、子どもの頃からピアノものの漫画とか大好物で。自分もピアノを長いこと習っていたんだけど、普通の高校に通ってる自分の周囲だけでもうまい人がたくさんいて、音大行ってプロになって、みたいなことが自分にできる気がさっぱりしなかったから、創作であっても、ピアノの才能ある人の話読むのはおもしろい。

評判通りもうおもしろくておもしろくて、かなりの分量だけど、二日かけて一気に読んだ。読んでる最中から、うわーおもしろいー!と興奮した。登場人物がみんな魅力的で、若者たちがコンクールを通して成長する様も、それに触発される審査員たちも、寄り添う周りの人々も、それぞれにストーリーがあって、それがきちんと描かれているのがすごくよい。中でも会社員でありながらコンクールに挑戦する明石さんの、生活者の音楽、というモチーフが、物語を地に足つけたものにしていたと思う。

集中したくて外で読んだんだけど、読みながら泣いてしまう場面がいくつもあって、こらえるのが大変だった。

物語もキャラクターも魅力的なので、これは映画化とか考える人が出てきそうだけど、実写化したら失敗しそう。文字だけで自分の中に描く世界感を楽しむのって、小説ならではの醍醐味だなーと改めて思った。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷