アップリンクで「マイク・ミルズのうつの話」を観た。ずいぶん前に川勝さんがTVブロスで紹介してて、これは是非観たい!と思ってたのだった。川勝さんはもういない。上映までにだいぶ時間がかかった。2000年頃に製薬会社が「うつ病」の概念を広めたという。それまで「うつ病」は一般的に知られていなかった、という映画の論調にちょっと驚いた。心理学科にいたからか、以前から「うつ」は一般的な気がしてた。日本にSSRIが入ってきたちょうどその頃、私は精神科で働いていた。新しい抗うつ剤ができてよかったね、と処方されるのをたくさん見た。薬物療法のすべてが悪いとはもちろん思わない。でも、長い間治療を受け続けている、出口の見えない患者さんたちのことを、その後どうしているかな、と今でもたまに思い出す。映画に出てきた、うつ病の人たちのことも、そんなふうに思う。今はどうなったかな。薬手放すことができたかな。何して暮らしているのかな。ごく普通の人もちょっと変わった人もすごく変わった人も出てきた。つまり、どんな人だってかかりうる病気ってことだ。日本の保険診療では、病名がついて、その病気に適用される薬が処方される。その病名がついた患者さんが増えると、薬はたくさん処方される。製薬会社が儲けを多く出すにはどうしたらいいか、ということを考えると、暗い気持ちになる。多額の費用をかけて開発された薬は、ジェネリックが発売されるまでの期間にたくさん販売されないと、というのは企業として当たり前のことだ。


ともあれ、私は個人に寄り添いたい。